「6月」“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。

2024年6月1日
COLUMN

“440 presents uchuu in the four forty”の仲間たち。今、この時、この季節を思いのまま綴ってくれます。

私とポチは喧嘩した

朝日が眩しく感じられた時に、私は私の目が開いていることを知りました。そして、どうしてこんなことになってしまったのだろうかと、数多の言葉、感情、景色が頭を走り抜けてゆきました。

端的に言いますと、昨晩、私は一緒に住んでいる犬と喧嘩をしてしまったのです。始まりは、とても些細なことでした。そして、それは思い返せば随分と昔から感じていたすれ違いだったとも思います。

言い争ったまま寝てしまったのですから、目が覚めた途端に、そうした負の台風が脳の奥で荒れ狂ったのです。私は、大抵の争いごとや揉め事は多面的であることを知っていますから、当然、大なり小なり私にも何かしらの難があるのだろうと思うのです。でも、そんな冷静な整理から分身した怒り狂うワタシもいます。そのワタシはなんて自己中心的で、なんて感情的で、なんて情けないのでしょう。

カーテンをしっかりと開けて、まさに今昇ってきた出来立ての太陽を体に染み込ませました。でも「どうしてこんなことに」の私と、怒り狂うワタシは、どうやらどちらも私の住人らしく、右足を動かしては怒りたくなり、左足を動かしては言い訳がましく状況の説明をしたくなりました。今にも体が分裂してしまいそうです。

遠くから足音が聞こえてくることに気がつきました。このまま1日を始めると、憎きお相手様に出くわしてしまうことに気がついたので、急いでイヤホンをして、とりあえずスマートフォンをタップしました。

昨日、晴れた空のもと、心地よく聞いていたaqubiのアルバムの続きが流れ始めました。

“理想の暮らし　どこにある？　あの日置いてきたかも” （理想の暮らし/aqubi scenesより）

耳の筒の中を、優しくピアノが流れてゆきます。気づけば私は、イヤホンと耳を一つにし、そっと目を閉じていました。そして、怒るワタシを観察し、冷静に考えたい私をなだめて、みんなで話し合いを始めました。

—なぜ怒るんだい？
—悲しいのさ、あんなに大事にしていたんだもの。
—怒っているけれど、君は、あの子を大事に思っていたんだね。
—そう言う君は、ただ冷静でいたいのかい？
—そりゃ、本当は怒りたいさ、でもきっと、そんな時は自分にも問題があるんだよ。
—つまり、君も、あの子を大事に思っていたんだ。

今にも分裂しそうだった私は、急に粘土のように柔らかくなり、丸く小さく一つになりました。なぜ怒るのか、なぜ気持ちを整理したいのか、どうやら、私たちは一つの道筋を見つけたようです。

太陽から得たエネルギーが急速に身体をめぐり始めました。

これからポチとどうなるかは分かりませんが、少なくとも、私のポチへの気持ちは一つになりました。たとえ離れ離れになる結末を迎えても、きっとそれがポチと私の幸せなんだと思えました。きっと、後悔しないでしょう……。